昔は躁うつ病といわれていたもので、躁状態とうつ状態が交互にみられるものです。
躁状態の時には、気分が楽しく、やる気に満ち溢れどんどん新しいことをはじめます。新しいアイディアも思い浮かびます。しかし、すぐに気が変わってしまうので意外に結果はだせていなかったりします。
上機嫌で陽気ですが、ささいなことでイライラしたり、怒りっぽくなったりもします。睡眠をとらなくても平気でまったく疲れません。浪費したり、普段はしないような行動をしてしまったりもあります。
うつ状態では、何週間も毎日ゆうつな気分が続きます。食欲がなくなり、きちんと眠れません。嫌なことが頭から離れず、何を考えてもネガティブなことしか浮かびません。
さらには体が動かず、寝たきりのようになったりします。便秘や喉の渇き、口の違和感、めまい等の自律神経症状がでることもあります。
必ずしもわかりやすいうつ状態だけではなく、躁状態とうつ状態が混じり合って、うつ状態なのにじっとしておられず焦りがひどくなって落ち着かない場合もあります。
躁状態が強く典型的な躁うつを繰り返すタイプを「双極T型」といい、躁状態が軽い場合を「双極U型」といいます。
「双極U型」の場合の躁状態はごく軽いもので、表面的には元気がよい、体調がよいという程度に感じられ、躁病相が見落とされて単純なうつ病と診断されていることがあり注意が必要です。
具体的な患者さん自身の体験はこんな感じです。
「仕事が重なって無理をしていましたが、頑張って業務をこなしていました。周囲の期待にはそれなりに応えていたつもりです。
朝早くから目が覚めたり眠りが浅かったり、眠れない日が続いていたある朝、突然起きられなくなってしまい出勤できなくなりました。」
「元々は元気でテンションが高いタイプですが、体が言うことをききません。気持ちばかり焦って、どうにもなりません。
振り返ってみれば昔から無理をした時に寝こんだりすることがありましたが、なんとなく元気に戻っていたので気にしませんでした。
人間ですから体調や気分の波があるのは当たり前で、自分では病気とは思えないのですが、家族や友人からは心配されます。」
双極性障害というのは周囲からみるとわかりやすいですが、自分自身で双極性障害であると認識するのは意外に難しいものです。
実は双極性障害のなかには、単なるうつ病と誤解されているケースもあります。最初はうつ病と診断されていた方の約1割が、治療が進んでいくなかで最終的に双極性障害と判明します。
重要なのは、双極性障害とうつ病では、治療方針や投薬も異なることです。
うつ病では「うつ状態を改善する」ことが治療目標になるのに対して、双極性障害の治療では、「躁とうつの波をどうコントロールしてゆくか」が重要になります。
双極性障害にもかかわらず、うつ病の投薬がなされていると治療がうまくいかないことがあります。「うつ」のみを経験した方と、「うつ」と「躁」の両方を経験した方では、治療方法や薬がちがうのです。
双極性障害の治療のポイントしては、
1)自分で病状がよくなったと思っても、自己判断で治療をやめずに、主治医や家族とよく相談する。きちんと定期的に受診して服薬を続ける。
2)自分の今の状態が、躁であるのかうつですあるのか、記録をつけて家族と確認する。
3)多忙な時でも、睡眠時間を確保し、無理にスケジュールをつめたりせずに、常に生活に余裕をもつ。
4)季節の変わり目など、自分の調子を崩しやすい時期がある場合には、はやめに対応を心がける。
5)仕事や家族関係、イベントなど、自分が調子を崩す要因がある場合には、ひとりで抱え込まず周囲に助けを求める。
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